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朝鮮人民民主主義共和国(以下朝鮮)の金正日が日朝国交正常化交渉の席で 拉致について謝罪し、拉致被害者の生存者と死亡者についての情報も伝えられ たことで、マスコミはこぞって、毎日毎日家族の行動と怒りを報道しています。 そして「国交正常化するな」と煽る動きも活発になってきています。 A 小田実が慶応大学で講義した中での発言ですけどね、「する側の 論理」と「される側の論理」っていうことを言ってるんですよ。今回のことで言 えば、「する側」は小泉さんと金さんで、国交回復が目標でしょ。「される側」 というのは拉致被害者家族であり国民なわけですよね。とかくすると「される 側」の論理は歴史の中で埋没していき勝ちなんです。「される側」としての朝 鮮の人というのは、植民地支配の日本の責任をいいたいわけですよ。そうした ことを無視して、日朝国交回復という「する側」の論理のみで進んでいるとい う批判を小田実はしてましたね。 まとめとして、若い学生に考えてもらいたいことというのを言ったんです。 @「される側」に立って考えること A知的に考えること(時間的広がりの中 で考えることもその一つ)B人間的想像力(human imagination)を駆使して考 えること。この三つです。 B 「される側」の国民にとって、長い目でみれば、国交回復は結構 なことですよ。インフラ整備されて生活が向上するなら、朝鮮の人にとっても いいことでしょ。Eさんのいうのは「する側」の論理の中に「される側」の論 理を閉じこめてはいけないっていうことでしょ。 A 小田さんは「する側」の論理が先行していくことを憂えているん です。拉致家族の悲しみのみに焦点が当たりすぎて、知的な側面が欠如してい ると心配しているんです。 B 知的な想像力という中には歴史的視点というものがありますね。 A 日本が行った従軍慰安婦の強制連行、強制労働、あれも「拉致」 だと、小田さんはハッキリ言いました。「拉致」は現代版強制連行ですよ。 C 強制労働は150万人ですよ。畑で働いている人のところへ憲兵が トラックで乗り付けて堂々と連れてきたでしょ。朝鮮はコッソリ拉致してる。 D 強制連行の場合は使い捨てにされたし、人間性も踏みにじったし、 二重三重に人権蹂躙してて、タチが悪いですよ。 A 朝鮮に近い人が、「大きな声では言えないけれど、強制収容所が あって、拉致されて亡くなった人はそういうところで殺されたと思う」って言 ってましたよ。 小田さんの奥さんのお姉さんの夫はある日突然連行されていったんだけれど、 国際的にマスコミに訴えると騒いで、帰して貰ったことがあるっていってまし た。そういうとき、たいていの人は「国家反逆罪」で連れていかれるらしい。 それと、キリシタン時代の5人組みたいな制度があって、夕べの集会というのを やって、だれそれがこんなことを言ってたなどと報告し合うということも言っ てた。 C そんなことばかり言ってても、埒はあかないですよ。金正日が謝 罪したというところから出発しないと。 E 1959年にエキスパートたちは希望を持って帰国したんですよね。 そういう人が突然消息を絶っているんです。アムネスティが入って調べると、 射殺されたりしているんですが、日本政府はタッチできない。 D 国内問題ということになりますからね。 A そうした状況が80年代まで続いたんですよ。密告制度は今でも生 きてるようですしね。 E だから、あの時国交回復していれば、こんなことはなかったんで すよ。 A 朝鮮へ行くと、パスポートを預けなきゃならないんですよ。誰が 行っても取り上げられるらしいですね。何事か起きるとパスポート返さないん ですよ。それとね、盗聴すごいですよ。恐らく、この前の日朝会談で小泉さん 達は持っていった弁当を食べながら会議やったでしょ、あの部屋も間違いなく 盗聴されてたはずですよ。 E そういう国が開こうとしているんです。金日成の神話を崩すこと は難しいけれど、だんだん開かれていきますよ。「拉致問題解決しなければ国 交回復するな」という考えは排除したい。 F 「拉致事件被害者の涙に重ねて思い浮かぶのは、この57年余、朝 鮮にあって、今も同じ涙にくれている多くの人々の存在である」、このことを 一番言いたかったんですよ。慶応の神谷さんは学者だからこのことをよく知っ てるはずです。かつて朝鮮半島の人々を強制連行したということは書いていま すけれど、歴史には「時代思想」というものがあって、区切り区切りで終わっ てるっていう論調で、問題感じますね。 1975年に朝鮮に行ったとき、外務省の役人が説明してくれたんですが、「ブ ッコク寺を300何年前に日本に壊された」って言うんですね。「される側」の論 理は時代時代で区切ることはできないといういい例です。「時代思想」だとい って葬り去ってはいけないんですよ。 C 朝日が数日前、同じことを言ってる。「日帝時代の強制連行より 現代の拉致の方が重い」って。 F それを言うなら日本の方が重いって言わなきゃ。 C そうね。一人の命の重さを天秤で量ってはいけませんね。 A 過去の歴史的事実が国民に知らされてないことが問題なんですよ。 皇民化教育で日本はひどいことをしたんですけどねぇ。 F 家永さんから書くようになったんですよ。 C いや、真実を書いた本は沢山出てますよ。目に入ってこないだけ ですよ。私たちは選択する目を持たくっちゃ。 |